先輩や上司からそれぞれ違う指示を受けたり、取引先の誤解なのになぜか担当の自分が責められたりと、会社内でのトラブルは珍しくないものです。
ですが、そのことを理由に解雇されるとなると、ただのトラブルでは済ませられません。
突然解雇を通告されたら冷静ではいられないでしょう。しかし、解雇には厳しい制限があり、一定の要件を満たさなければ不当解雇として違法かつ無効となる可能性があります。
そこで今回は、不当解雇の基準やその具体例、退職勧奨との違い、不当解雇が疑われる場合の対処法などについて解説します。
まずは、解雇の定義を確認しておきましょう。
解雇とは、使用者が(一方的に)労働契約を終了させることをいいます。
これに対し、労働者が労働契約を終了させることを自己都合退職(自主退職)といいます。
解雇の種類には大きく分けて「整理解雇」「懲戒解雇」「普通解雇」の3つがあります。
民法では、雇用に期間の定めがない場合、各当事者は解約の申込みをすれば、当該申し込み後2週間経過したときに契約は終了すると定められています(民法627条第1項)。
したがって、使用者にも解雇する自由が認められています。
しかしながら、使用者が一方的に解雇できるとすると、労働者に著しい不利益が生じるとともに、解雇権は制限されています。
各法律で、以下の解雇を禁止しています。
労働基準法
- 国籍、信条又は社会的身分を理由とする特別な条件に基づく解雇(第3条)
- 業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇(第19条第1項)
- 産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇(第19条第1項)
- 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇(第104条第2項)
- 有給休暇を取得したことを理由とする解雇(第136条)
労働組合法
- 労働組合の組合員であること等を理由とする解雇(第7条第1号)
- 労働委員会への申立て等を理由とする解雇(第7条第4号)
男女雇用機会均等法
- 労働者の性別を理由とする解雇(第6条第4号)
- 女性労働者が婚姻・妊娠・出産・産前産後の休業をしたこと等を理由とする解雇(第9条第2項・第3項)
- 都道府県労働局長に援助を求めたこと等を理由とする解雇(第17条第2項、第18条第2項)
育児・介護休業法
- 労働者が育児・介護休業を申し出たこと等を理由とする解雇(第10条、第16条、第16条の4、第16条の7、第16条の9、第18条の2、第20条の2、第23条の2)
これらに該当する解雇は、法律上定められた例外要件をみたさない限り、不当解雇となります。
使用者が有効に解雇をするためには、「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当である」と認められる必要があります(労働契約法第16条)。
1回の些細なミスで解雇されるようなことがあってはなりませんし、何らの説明もなしに解雇されることがあってはならないのです。
整理解雇の場合、
といった点が重要になります。
とくに、解雇を回避する努力を一切していなかったり、対象者の選別が恣意(しい)的に行われているような場合には、解雇が違法となる可能性があります。
能力が不足していたり、勤務態度が不良である場合でも、それのみで直ちに解雇することはできません。
など諸事情を総合考慮した上で、解雇に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合にのみ、有効と認められることになります。
適切な指導によって改善の機会が与えられることなく、突然解雇した場合には、違法となる可能性が高いといえるでしょう。
①不当解雇とは
客観的に合理的な理由ないか、社会通念上相当と認められない解雇のことです。
②退職勧奨とは
使用者が労働者に退職を勧めることです。それ自体が直ちに問題になるわけではありませんが、方法や程度によっては違法となる可能性があります。
退職の意思がないのであれば、まずはしっかりと、退職しない意思を表明しましょう。
これに対し、使用者側が何度も呼び出して執拗に退職を促してくる場合があります。
そのような過度な退職勧奨は、もはや退職を強要するものであり、不法行為として損害賠償の対象になる可能性があります。
しかし、これに応じて退職の意思を示したり、退職届を出してしまうと、後で不当解雇であるとして裁判で争っても、労働者から申し出た自己都合退職(自主退職)と判断される可能性があります。
使用者から過度な退職勧奨を受けた場合には、使用者の圧力に屈せず、すぐに専門機関や弁護士へ相談すると良いでしょう。
まずは不当解雇であることを裏付ける証拠を集めましょう。
このようなものが、証拠となる場合があります。
次に管轄する労働基準監督署や、労働問題の取り扱い経験が豊富な弁護士に相談し、法的知見に基づくアドバイスをもらうのが得策です。
①労働基準監督署の場合
労働基準監督署は行政機関のため、無料で相談できる反面、受付時間が限られていたり、会社に命じて強制的に何かを実現させることはできません。
また、個人のサポートは対応範囲外です。
②弁護士の場合
これに対して弁護士の場合は、費用はかかるものの、証拠収集から会社との交渉、訴訟までを一括して任せることができます。
(1)でも触れましたが、解雇理由証明書は確実に請求しておきましょう。
使用者に拒否された場合、それ自体も違法行為となる可能性があります(労働基準法第22条第2項)。
解雇理由証明書を請求する理由は、解雇の正当性を確認するためです。
解雇理由証明書をチェックするポイントとしては
等です。
もし不当解雇を争う場合、退職金は受け取らないようにしましょう。
受け取った場合、不当解雇を争う行為と矛盾しているとして不利になる可能性もあります。
口座に振り込まれた場合は、手を付けないことが原則です。
また、解雇撤回を求める書面を内容証明郵便で送ることも対応策のひとつです。
今回は不当解雇に該当するケースや、その際の対処法について説明しました。
本来、使用者が行った解雇が有効と認められるのは簡単なことではありません。
しかし残念ながら、合理的な理由もなく、または合理的な理由があったとしても不相当に解雇されてしまうこともあります。
そのような不当な解雇をされた際には、
「解雇と言われた以上、従うしかないのかもしれない」
「そもそも不当解雇かどうかも分からない」
「何とかしたいがどうしたらいいのだろう」
などと思い悩んでしまうかもしれません。
しかし、おひとりで思い悩むよりも、すぐに専門家にご相談されるべきです。
そうすれば、時間を無駄にせずに、お悩みを解決することができるでしょう。
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厚生労働省が公開しているデータによれば、新型コロナウイルス感染症の影響で解雇などが見込まれる非正規社員は3万6266人(令和2年5月25日~12月4日までの累積値)と、多くの非正規社員が厳しい状況におかれていることが分かります。
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会社をクビになった(解雇された)場合には、「解雇予告手当」「雇用保険の基本手当」といった手当を受け取れる可能性があります。新型コロナウイルスの影響で企業の雇用も不安定になっている現在、今後の生活のためにも、可能な限り手当を受け取っておきたいという方は少なくありません。
ただし、これらの手当を受け取るには条件があり、手続き方法もそれぞれ異なります。
今回の記事では、会社をクビになったときに受け取れる可能性がある手当について、具体的な内容と条件、受け取るための手続きなどについて解説します。
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