近年、業界をリードする大手企業がリストラの一環として希望退職制度を実施するケースが相次いでいます。ニュースなどで耳にしたことがある方も多いでしょう。
中には業績が堅調な企業でおこなわれることがあり「なぜ?」と感じることがあるかもしれません。
また、ご自身の勤務先で希望退職者の募集が行われ、応募するべきか迷っている方もいるのではないでしょうか。応募するべきかどうかの答えを出すには、そもそも希望退職制度とはどのような制度なのか、応募するメリットやデメリットは何なのかを知る必要があります。
この記事では、希望退職制度の概要や企業が実施する理由、応募に際して考えるべきポイントなどを弁護士が解説します。
一般的に、「リストラ=解雇」だという認識を持っている方が多いのではないでしょうか。
ただ、リストラとはリストラクチャリングの略称で「再構築」という意味があり、収益性の向上や企業成長の維持のための活動全般を指します。
解雇以外にも労働時間の削減、賃金やボーナスのカット、降格、配置転換、出向、M&Aなどさまざまな手段があるため、本来の意味としては解雇のみを指すのではありません。
したがって希望退職、早期退職制度などもリストラのひとつと位置付けられます。
この記事でも希望退職、早期退職制度がリストラであるとして解説します。
東京商工リサーチによると、平成31年1月から令和元年12月までの1年間に希望・早期退職者を募集した上場企業は36社、対象人数は1万1351人となっており、企業数、対象人数ともに過去5年で最多を更新しました。
業績不振の企業だけでなく業績が堅調な業界大手が先行的に実施するケースも目立ってきています。
では、なぜ黒字であるにもかかわらず企業はリストラに踏み切るのでしょうか。
次のような理由が考えられます。
希望退職制度とは、企業が雇用する労働者の中から退職希望者を募る制度です。
企業が独自に設ける制度であるため、条件や内容、適用の場面などは一律ではありません。
しかし、一般的には企業が業績悪化を受けるなどし、人員整理を目的として行うものとされています。
「希望」とあるとおり、応募するか否かは労働者の自主的な判断に委ねられ、強制力はありません。
希望退職は、あくまでも企業と労働者の合意に基づく退職です。
そのため、希望すれば必ず認められるわけではありません。
希望退職制度の対象でも、自己都合退職とみなされるケース
たとえば、希望退職の対象であったとしても企業が手放したくない優秀な人材や専門性の高い人材であれば、希望しても引き留めにあうケースがあります。
これを振り切って退職すれば、もはや希望退職ではなく自己都合による退職とみなされ、希望退職制度の優遇措置は受けられなくなる可能性があります。
なお、似た言葉に早期退職制度があります。
両者の違いとしては、以下の通りです。
希望退職募集が行われた場合、応募するべきか迷うケースがあるでしょう。
その答えを得るためのヒントとして、応募するメリット・デメリットについて解説します。
①退職の条件が有利になる
まずは、退職の条件が有利になる点です。
たとえば退職金の増額が挙げられます。自己都合退職や定年退職よりも、優遇される可能性が高いでしょう。まとまったお金が入るため起業や海外留学など、やりたかったことに挑戦する資金にもなります。
ほかにも、転職先を見つけるための期間として特別休暇が付与される、再就職支援を受けられるなどの優遇措置が設けられている場合があります。
②基本手当(失業保険)の受給条件が有利になる
基本手当(いわゆる失業保険)の受給にあたり、自己都合退職と比べて優遇されるのもメリットです。
具体的には、3か月の給付制限がないため早期に受給できる、受給期間が長いという点があげられます。
特定受給資格者
もっとも、この2つの優遇を受けるためには、「特定受給資格者」と認定される必要があります。希望退職募集に応募したからといって当然に特定受給資格者と認定されるわけではなく、人員整理を目的としており、措置が導入された時期が離職前1年以内であって、募集期間が3か月以内であるものでなければ、特定受給資格者とは認定されません。
特定理由離職者
ただ、特定受給資格者と認定されない希望退職募集であっても、「特定理由離職者」と認定される可能性が高く、その場合、3か月の給付制限がないという優遇のみ受けることができます。
希望退職制度はあくまでも本人の希望に委ねられる退職制度であるものの、その目的は人員整理であり、企業側に責任がある退職として扱われます。
①転職先が決まる前に、退職しなければいけない可能性がある
転職するときには、転職先が決まってから退職するのが一般的です。
しかし、希望退職制度は恒常的に募集されているものではないため、限られた期間のうちに転職先を決める必要があります。
転職活動の状況によっては、次が決まる前に退職日を迎える可能性があります。
②収入が途絶えて生活や精神面での負担が大きくなる
無職の期間が生じると、収入が途絶えて生活に困窮する、焦りの気持ちが生じて精神的に不安定になるなどの影響が考えられます。
無職の期間が長くなるほど職務スキルの低下などが懸念され、再就職先が決まりにくくなる点もリスクと言えるでしょう。
希望退職制度ではさまざまなメリットを提示されますが、応募が自由である以上、退職した結果として何が起きても自分の責任となるので、慎重に考える必要があります。
など、ご自身やご家族の状況と照らしじっくりと検討することが大切です。
表面的には希望退職だとしながらも、実際のところは退職勧奨のケースがあります。
希望退職は本人が自主的に希望して辞めるのに対し、退職勧奨は企業側の働き掛けによって最終的には本人の意思により退職するものです。
退職勧奨も、退職の意思決定が本人に委ねられている以上、適正な方法で行われていれば法的に問題はありません。
しかし、下記のように行き過ぎた退職勧奨は違法となる可能性があります。
このように不当な退職勧奨があった場合は、弁護士へ相談しましょう。
弁護士は、退職勧奨に違法性があるかを適切に判断します。
違法性があった場合は、退職の強要をやめるよう通告する、裁判所に差止めの仮処分命令を出してもらうといった対処ができます。
悪質な退職勧奨の場合は、企業に損害賠償を請求できる可能性もあります。
なお、違法な退職推奨があったことを証明するためには、証拠が欠かせません。
退職勧奨の経緯をメモにまとめておく、企業側との話し合い状況を録音しておくなど証拠を残しておくことが大切です。
リストラのひとつである、希望退職制度について解説しました。
退職金が増額される、基本手当の受給で有利になるなどのメリットがある一方で、転職先が決まらず経済的に困窮するリスクがあるなどのデメリットもあります。
勤務先で実施される希望退職制度に応募する場合は、慎重に検討しましょう。
大々的に報道されるのは大企業が中心ですが、中小企業でも行われることがあります。
希望退職制度の利用を検討するにあたり、執拗(しつよう)な退職勧奨を受けた、不当解雇されそうになったなどのトラブルが発生した場合は、迷わず弁護士へ相談してください。
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