平成20年にアメリカで起こったリーマン・ショックは、日本経済にも大打撃を与えました。以後、緩やかながらも堅実に回復を見せていましたが、新型コロナウイルス感染拡大による影響についてはなおも予断を許しません。
新型コロナウイルスの流行によって、厳しい状況に立たされた会社が倒産した事例も数多く報道されていますし、解雇・リストラを受ける労働者も非常に増加しています。なかには会社からしつこく退職を迫られている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、「解雇とリストラ」の違いや、リストラもしくは解雇を言い渡された場合の対抗策を弁護士が解説します。
リストラと解雇は、同じ「会社を辞めさせること」という行為を指す言葉だと感じる方もいらっしゃるでしょう。
本来、リストラという言葉は、解雇を指すものではありませんが、日本では、「リストラ=解雇」をイメージする方が多いのが現状です。
もし、会社から「リストラ」と言われたら、どう対処すればいいのでしょうか。
第1章では、リストラや解雇とは何を指すのか、まずは解説していきます。
「リストラ」とは、正しくは「リストラクチャリング(restructuring)」といいます。
企業が周囲を取り巻く環境の変化に柔軟に対応し、事業を再構築することを指すもので、本来は労働者を辞めさせるという意味ではありません。
リストラクチャリングの手法は多岐にわたります。
事業の効率化、成長部門への集中投資や不採算部門の整理、労働環境の整備などもリストラのひとつです。
本来の意味のリストラは、解雇だけを意味するのではありませんが、日本でリストラというと、「会社の経営悪化を理由として人員を削減(解雇)すること」を指す場合が多いでしょう。
解雇とは「使用者による一方的な労働契約の解約」をいいます。
解雇は、以下の通り、解雇の理由によって、普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の3種類に分けることができます。
①普通解雇とは
健康状態の悪化により業務に耐えられなくなったとき、能力不足、勤務不良、業務命令違反など、通常就業規則に列挙されている解雇の理由に該当した場合に行われる解雇です。
②整理解雇とは
会社の経営不振や経営の合理化を理由とした解雇です。
③懲戒解雇とは
重大な契約違反や信用失墜行為などを理由に行われる懲罰的な性格をもつ解雇です。退職金が支払われない、再就職において不利になるなど、場合によっては非常に重いペナルティーを負うことになります。
先ほど触れた、日本でいう「リストラ」、つまり「会社の経営悪化を理由とした人員削減(解雇)」は、「整理解雇」にあたります。
ただし、人員削減を目的とした解雇が、すべて有効な整理解雇とされるわけではありません。
会社側の一方的な都合で労働者を解雇する整理解雇は、立場の弱い労働者の権利保護のために特に制限されています。
具体的には、整理解雇が有効かどうかは、
この4点をそれぞれ考慮して、厳格な判断がされることになるのです。
リストラと近い用語として「レイオフ」という制度があります。新型コロナに関連して海外では、大規模なレイオフが実施されたというニュースが報じられています。
レイオフとはどのような意味か?
レイオフとは「一時解雇」という意味です。
企業の経営が急速に悪化した場合の経費削減策として、一時的に労働者を解雇したのち、業績が回復したら再びその労働者と雇用契約を結ぶ手法をいいます。
会社の緊急時には合理的な方法のように感じられますが、日本の法律においてはレイオフのような一時解雇に関する規定は存在していません。
会社の経営悪化などの場合に、会社が労働者に対して退職を促すことは、退職勧奨や退職勧告と呼ばれます。退職勧奨・退職勧告は、必ずしも法律違反ではありません。
これを受けた場合でも、労働者に退職する義務はありません。
なぜ、会社は解雇ではなく、自主退職を勧めてくるのでしょうか。
それは、解雇には法律上の厳しい条件があるためです。
会社が労働者を解雇するためには、法律上厳しい条件が定められており、会社は気軽に労働者を解雇することはできません。労働者の意思に反する退職勧告・勧奨は、退職強要とみなされ、法律違反にあたる可能性があります。
もし、会社側が不当な解雇を実施した場合、法的な罰則を科されたり、労働者から解雇の無効を申し立てられたりする可能性があります。
これに対して、労働者が自発的に会社を辞めることについては、法律上の条件はほとんどありません。
つまり、労働者を辞めさせたい会社にとっては、労働者が自主退職扱いで辞めてくれた方がリスクもなく、非常に都合がいいのです。
そのため、労働者を自主的な退職へ追い込もうとする会社が後を絶ちません。
しかし、退職を促すにとどまらず、退職を強要するようなことがあってはならないことです。最終的な退職の意思決定は、あくまでも労働者に委ねられています。
行き過ぎた退職勧奨は、退職強要として、違法行為とされる可能性があります。
たとえば、次のようなケースでは「労働者本人の自由意思」による退職とはいえないため、「退職強要」である可能性があります。
このような場合、労働者が退職届を書いていても退職を無効にすることができる可能性がありますし、慰謝料請求(損害賠償請求)が認められる可能性もあります。
詳しくはこちらのコラムで解説していますので、併せてご覧ください。
>退職勧奨されたら、どのように対応すれば良い!? 弁護士が解説
ですが、退職勧告・退職勧奨と退職強要の線引きに、明文化された判断基準はないため、
専門的な判断が求められます。
そのため、法的知識がない一般の方が「自分の状況は違法な退職強要にあたるのか」を判断するのは難しいでしょう。
自分の状況が違法な退職強要にあたるのか、会社に対してどんな対抗手段がとれるのかが気になる場合には、早めに弁護士へ相談されることをおすすめします。
不当な理由で、退職勧告を受けた場合は、適切な窓口・機関への相談をおすすめします。
先ほども述べましたが、会社からの退職勧告に応じる義務はありません。
特に、労働期間の定めがない正社員として採用されている場合は、会社が定める定年までに退職を求められても、これに応じる必要はありません。
直属の上司や所属する部署などから不当な退職勧告を受けている場合は、社内の相談窓口への相談をするのもひとつの方法でしょう。一般的に、人事部や総務部などが窓口になります。
また、労働組合への相談という方法もあります。労働組合による組織力を生かした対応も期待できるでしょう。
「労働に関するトラブルの相談は、労働基準監督署」というイメージをもっている方も多いのではないでしょうか。
不当解雇などの法令違反については、労働基準監督署でも相談を受け付けていますが、ここで注意しておきたいのが「労働基準監督署がすべての問題を解決してくれるわけではない」ということです。
労働基準監督署は、労働基準法によって規制されている、違反行為などに対処するための行政機関で、給与の未払い、長時間勤務の強制などに対して会社への指導・勧告が期待できます。
しかし、個別のトラブルに対する具体的な解決までもが約束されているわけではありません。労働基準監督署から会社に対して指導・勧告をすることはあっても、労働基準監督署が労働者の代わりに金銭的な請求をしてくれるわけではありません。
リストラ(整理解雇)や退職強要といった労働トラブルの解決を目指すなら、労働に関する法令の知識を持つ、弁護士への相談もおすすめです。
弁護士であれば、退職強要を受けている場合には、どのような対応をとるべきなのか、後の交渉にそなえてどのような資料を証拠として押さえておくべきなのか、アドバイスをすることができます。
また、会社によるリストラ(整理解雇)が不当解雇にあたる場合は、労働者の代理人として、解雇の撤回、未払いとなった賃金・退職金について会社との間で交渉をすることができますし、必要に応じて労働審判や訴訟の対応も可能です。
新型コロナウイルスの影響により、経営難や人件費の削減を理由にリストラを断行せざるを得ない会社は少なくないでしょうが、そもそも会社には労働者を自由に解雇する権利はありません。
とくに、「自主的な退職であった」と装いながら、解雇同然、不当に退職を強いる会社には、断固として対抗するべきでしょう。
不当なリストラ(整理解雇)・退職強要などの労働トラブルの解決を目指すなら、ベリーベスト法律事務所にお任せください。
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失業保険は、失業期間中に国から給付される手当です。会社を退職してから次の就職先が決まるまでの生活を支えるために設けられている制度です。失業保険は、解雇された場合でも一定の要件を満たせば受給することができます。
しかし、退職の理由などによって、受給される金額や受給日数などの条件が異なります。自分のケースではどうなるのかをぜひ知っておきましょう。最近の統計に目を向けると、令和2年度の一般被保険者への受給資格決定件数は、151万3612件で前年比12.4%増となっています。それだけ、失業保険給付の申請をしている人が多くなっているのが現状です。(出典:雇用保険事業年報令和2年度)
今回は、解雇された場合の失業保険の受給条件や手続き方法のほか、不当解雇だった場合の対処方法、65歳以上の解雇の場合の失業保険はどうなるのかについて、詳しく解説します。
入院をして会社を休んでいたことを理由に、会社からクビにされることはあるのでしょうか。
入院には、業務上のケガや病気によって入院した場合と業務外の場合があり、入院を理由した解雇が不当だと判断されるケースがある一方、解雇が認められるケースもあります。
本稿では、入院を理由に不当解雇となるのはどのようなケースなのか、弁護士が説明します。あわせて、長期入院によりクビにされた場合の対応方法についても詳しく解説します。
退職勧奨をされたら、必ず退職をしなければならないのでしょうか? 新型コロナウイルスの影響が長引いていることもあり、2021年の上場企業(募集人数を公表した企業69社)の、早期・希望退職者の募集人数は1万5892人となっています。(出典:㈱東京商工リサーチより) 景気の不透明さが増す中、「ある日突然、退職勧奨をされたらどうしよう」と不安に思っている方もいらっしゃるでしょう。 法的には退職勧奨されても受け入れる必要はありませんし、勧奨が強制のレベルに達していたら、会社側の行為が違法となる可能性もあります。とはいえ、退職勧奨されたら具体的にどのように対応すれば良いのでしょうか? そこで今回は、退職勧奨された場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。
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